T-4 生化学実験に用いる単位と量(演習)
(その2)

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※ マニュアル本文(黒字)は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説(青字)は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
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 マニュアル本文

 3:SI接頭語
 単位が大きすぎたり小さすぎたりする場合、ゼロをたくさん書くことを避けるため、その単位の記号の前に接頭語をつける。基本的には単位が1000倍または1/1000倍になるごとに接頭語を変える。 ※0.000015 molは15μmol と書き、13400 m は13.4kmと書く。

 解説:<1mは何cmなの?>
 キロだとかミリだとか、センチだとかがおなじみですね。皆さん本当に良くつかってるはずです。さらに最近はパソコンを通じてメガ、ギガなど、環境問題で「水質検査すると微量に含まれる・・・・」なんてときにマイクロやナノなんてのがおなじみになってますね。これからこれらの表現について、きちんと整理して考えてみましょう。
 この接頭語はこれからの社会生活(実験で、とか学校の勉強でとかではありません)で、非常に重要です。接頭語の関係を使いこなすことが”日常生活”で必要ですからここで知識をまとめておいてください。いいですか、学校の勉強ではなく、死ぬまで必要になる基本知識ですよ!

 マニュアル本文

  接頭語と単位の記号の間にはすき間も、点や終止符も入れない。
 
誘導単位の記号の間には空間をおき、さらに、はっきりさせるために、文字の中ほどに点を打つことがしばしばある。
 例:ms=millisecond(ミリ秒)=10−3s
   m・s=metre × second(メートル×秒)= m × s

 解説:<日本は四桁、世界は三桁>
 日本の単位では、接頭語に相当する表現は一、十、百、千、万、十万、百万、千万、億、十億、百億、千億、兆、十兆、百兆、千兆・・・・・・というふうに変化することは知ってますよね。つまり、一、十、百、千という四桁単位で、次に万、億、兆、京・・・・と4桁ずつつづきますよね。ポイントは四桁ずつの変化ですね。世界で通用するSI単位も基本的にはこれと同じです。
 ただし、三桁で変化します。これはまず最重要項目として覚えなさい(ほら、また「覚えなさい」の命令が出ましたよ、重要です)。
 実はこの四桁と三桁の違いが、慣れないうちは混乱するようですね。がんばりましょう。
 解説:<SI単位の記号は大文字と小文字で意味が違う(その2)>
 また、前のSI基本単位のときに注意しましたが、ここでも非常に重要なことがあります。それは、たとえばミリやキロの記号はm(小文字)やk(小文字)であって、M(大文字)やK(大文字)ではありません。また、同様にメガやギガはM(大文字)やG(大文字)であって、m(小文字)やg(小文字)ではありません。ここで気づくことがありませんか?同じエムであっても、接頭語ではmはミリで、Mはメガとなります。つまり、ミリのつもりでMをつかうと、他の人はメガとよんでしまいますね。大文字と小文字の違いは大切です。
 解説:<大きい値を省略する接頭語と小さい値を省略する接頭語>
 接頭語はまず、2種類に大別します。「大きい値を省略するために使われる接頭語」と、「小さい値を省略するために使われる接頭語」です。始めは混乱しそうですが、いくつかはすでにおなじみですよね。
 解説:<大きい値を省略する接頭語>

 「大きい値を省略するために使われる接頭語」は三桁ずつキロ、メガ、ギガ、テラ・・・と変化しますね。最近はパソコン関係でテラまでおなじみになりましたね。そう、テラまでは覚えなさい。
 「???おい、その前にデカとヘクトがあるぜ・・!」
 
うん、これは余裕ができたら覚えましょう。デカは10を、ヘクトは100を表します。ヘクトはヘクトパスカル(パスカルは前に圧力として出ましたね)や、ヘクタールなどの表現でおなじみの人も多いでしょうね。
 意味を考えてみましょう。ヘクトは100を表すのですから、1ヘクトメートル(1hm)は100メートル(100m)という意味です。同様に、キロは1000を表します。1キロメートル(1km)は1000メートルですね。
 「なんだよ! 1hmと書くのと100mとかくのはあまり変わりないじゃん。」
 デカやヘクトならそう考えてもおかしくないですね。それなら、1MB(メガバイト)はどうですか?1000000Bと書くのとどちらが・・・・・。1GBは?

 解説:<小さい値を省略する接頭語>
 「小さい値を省略するために使われる接頭語」も三桁ずつミリ、マイクロ、ナノ、ピコ、フェムト・・・と変化しますね。最近の分析化学の発展によって、ピコまでの分析ができるようになりました。ピコまでは覚えましょう。っと、ここではセンチを忘れてはいけません。センチは1/100を表します。すでにセンチメートルとして小さい頃からおなじみですね。
 また意味を考えてみましょう。センチは1/100ですから、1センチメートルは1メートル(1m)の1/100ということです。これを再確認すれば、ミリは1/1000ですから1ミリメートルは1メートルの1/1000だとわかりますね。そのほかの接頭語もすべて考え方は同じです。
 解説:<パーセントとパーミル>
 センチについてもう一つ、知ってると役に立つ知識です。パーセントって知ってますよね。%で表します。/(〜分のという意味)の前と後ろに一つずつ、二つの小さい0が付いてます。これ、1と0と0、つまり100と見えませんか?。さあ、もう一つ話を進めます。一般社会ではほとんど使われませんが、パーミルという表現があります。「‰」と表します。ワープロでもパーミルで「‰」と変換してくれます。この記号は、パーセント(%)の/の後ろにさらに0が一つ足されてます。すなわち/と0と0と0、つまり1000と見えませんか?そうです。%は1/100、‰は1/1000を表しているのです。
 もう一つ、パーセントの「セント」ですが、これは、語源がセンチと同じです。つまりずばり1/100って意味なんですね。パーミルの「ミル」ですが、これは語源がミリとおなじですね。これは1/1000ですね。

 解説:<パーミルもあるんだよ>

 「‰」は、どんなときに使うかというと、私(筆者)の出身は水産学ですが、水産の世界では海洋学で塩分濃度が重要事項として出てきます。海の塩辛さですね。黒潮の塩分濃度と東京湾のような陸水(原則として塩分が無い)が多く混合している海域とで、塩分濃度が違います。黒潮は35‰程度で、東京湾などでは30‰より少ない場所も多いようです。こんな使い方をします。
 解説:<パーセントとパー>
 よくパーセントを省略して「パー」という人がいますね。意外と多いですよね。ここまで話を進めると、わかりますよね、「パー」のうしろに「セント」が付く場合と「ミル」が付く場合がありますね。ということは、省略して、(かっこいいつもりで)「%」を「パー」といっている人は、パーミルの存在を知らない人ですね。実は重要なのは、「パー」じゃなくて、「セント」の方なんですね、「セント」または「ミル」まで指定しないと1/100なのか1/1000なのかわかりませんね。だから、こういう言い方をする人は、ただの「パー」な人ですね。
 解説:<数字は3桁ごとに「カンマ」で区切るとものすごく理解しやすい>
 さあ、すべて覚えられる人は、問題無いですね。でも私(筆者)のように覚えるのはめんどくさくて苦手だ!と思っている人。まず、下にある9種類だけは覚えなさい(絶対の命令です)。
 「大きな値を省略するために使われる接頭語」は、
 キロ(k)=1,000    =10
 メガ(M)=1,000,000   =10
 ギガ(G)=1,000,000,000   =10
 テラ(T)=1,000,000,000,000  =1012
 「小さい値を省略するために使われる接頭語」は、
 センチ(c)=1/100    =10−2
 ミリ(m)=1/1,000    =10−3
 マイクロ(μ)=1/1,000,000   =10−6
 ナノ(n)=1/1,000,000,000  =10−9
 ピコ(p)=1/1,000,000,000,000 =10−12
 これだけは覚える必要があります。絶対ですよ。通学するときに電車を使っている人は幸運です。電車の中で覚えればいいんですからね。
 ここで、上の書き方で何かわかりませんか?
 一つは、三桁ごとに「,」(カンマ)が入ってますね!!間違えないように私はこのように三桁ごとに「,」を入れます。決して「.」(ピリオド)は入れないこと。だって、小数点と間違えますからね。でも、そんなのめんどくさいのでマイクロやピコ、ギガを使うわけですけどね。まだほかにはわかりませんか。
 特に、何乗という表現に慣れてない人、
 1,000=10(じゅうのさんじょう)
 1,000,000=10(じゅうのろくじょう)
 1/1,000=10−3(じゅうのまいなすさんじょう)
 1/1,000,000=10−6(じゅうのまいますろくじょう)
という表現がありますね。
 何乗の部分にマイナスが付かない方は3乗は1,000で6乗は1,000,000ですね。
 でも、マイナスが付く方はどうですか?マイナス3乗は1/1,000ですよね。マイナス何乗という表現は○○分の1という意味です。慣れてない人は、今のうちにこれも覚えましょう。
 といっても、この分野ではこのような表現は今後もたくさん出てきます。出てくるたびにここを思い出してください。そのうち嫌でも覚えますから。

 4:SI単位と並行して用いられる単位
 @リットル(l):体積に対するSI単位はm であるがリットル(l)も用いられている。
 リットルは1立方デシメートル(1デシメートル =10−1m =dm)に等しい。
 1000リットル     = 1立方メートル = m

 リットル(l)      = 1dm      = 10−3m
 1ミリリットル(ml)   = 1cm       = 10−6m
 1マイクロリットル(μl)= 1mm       = 10−9m

 A時間:秒に対して分、時間、年のような馴染み深い時間の単位は用いられる。

 Bグラム(g ):質量の基本単位キログラムに対して新しい名称が採用されるまでは、素単位として、さらにμg、mg等の接頭語と結合して用いられている。


 解説:<SI単位だけじゃやっぱり不便だよ!>
 ここは、SI単位ではないが、あまりにも普通に使われすぎて、いまさら変えるのも・・・・という単位です。
 リットルは簡単にSI単位に読み替えられますね。
 時間も同じですね。日常的にあまりにも普通に使われているので、単位呼称が多くなるのは当然ですね。
 質量を表すkgも、接頭語を覚えると、何か変ですよね。でも基準を1kgとおきましたので単位表現もkgです。これは覚えておけばいいでしょう。kgのkは接頭語ですからgの1000倍という意味は変わりません。

 

 5:SI接頭語の変換
 <変換法>

 解説:<1kmは何m? 変換のポイント>
 1km(キロメートル)は何m(メートル)か。1cm(センチメートル)は何mm(ミリメートル)か。日常生活でかなりよく出てきますね。次はこれについて考えてみましょう。私の教員経験で、高校を卒業してるはずなのに、これができない人が結構いました。
 ポイントは、
@ SI接頭語の順番を覚える。
A da、h、d、cの4つ以外はすべて3桁ずつの変化。
B 大きな接頭語に変換(例:μ→m、k→M)するときは変換する位に0.・・・の0を置き、元の数値との間に0を入れる。 →小さな数値になる。
C 小さな接頭語に変換(例:μ→n、k→1の位)するときは変換する位まで、元の数値のうしろに0を付ける。 →大きな数値になる。
 頭の中で変換することに慣れている人は何も問題ありません。なかなかできない人は、まず上の解説@〜Cを覚えた後、【表1.4および表1.5】を参照して、まず図として理解してみてください。

 解説:<大きな接頭語への変換では数値が小さくなるよ!>
  大きな接頭語への変換というのは、n(ナノ)だったらμ(マイクロ)やm(ミリ)、k(キロ)ならM(メガ)やG(ギガ)への変換です。1000kは1Mで、10μは0.01mですね。大きな方へ基準を移すわけですから、数値はこの例のように小さくなるはずです。私の経験では、これを逆にする人が多かったですね。間違わないように!!
 解説:<3桁ごとだけじゃない!日常生活と密着するほど細かく名前が付いちゃう>
 あと、c(センチ)とd(デシ)、da(デカ)とh(ヘクタ)には注意してください。
 日常生活と密着すればするほどどんな分野でも細かく言い方が変わりますよね。

 
 解説:<小さな接頭語への変換では数値が大きくなるよ!>
 小さな接頭語への変換というのは、m(ミリ)だったらμ(マイクロ)やn(ナノ)、G(ギガ)ならM(メガ)やk(キロ)への変換です。1Mは1000k(数値は1→1000)で、0.01mは10μ(数値は0.01→10)ですね。大きな方へ基準を移すわけですから、数値はこの例のように大きくなるはずです。
 大きな接頭語への変換と同様、c(センチ)とd(デシ)、da(デカ)とh(ヘクタ)には注意してください。
 解説:<日常生活でも変換は必要だから、よく出てくる接頭語とその順番を覚えること>
 実際に仕事をする上で、このSI接頭語の変換は、良く出てきます。接頭語の構造を理解すれば簡単です。慣れるまではこの表を使っても良いでしょう。
 基本は、センチ(-2乗)、ミリ(-3乗)、マイクロ、ナノ、ピコそしてキロ、メガ、ギガ、テラの順を丸暗記してしまうことです。
 これから良く出てくるのは、たとえば、320μgの試薬を採って100mlの水に溶かしなさい。なんて時、320μgは・・・ああ、0.32mgだ! 10mgは何μgか、とか、0.3kgって書いてあるけど・・・、ああ、300gか!!とか変換した方がわかりやすいことも多いですよ。必ず使いますから確実にマスターしなさい。
 解説:<慣れるまでは変換表を使っちゃおう、印刷だ!>
 上の表の使い方
 四角い枠が【表1.4】【表1.5】それぞれにありますね。中は同じですね。
 まずこの枠の中を覚えます。前から書いてあるとおり、k、M・・・Tなどを順番と同時に覚えればいいのです。ゼロ3つ毎だから覚えるのは順番だけですね。
 そして、ゼロをその下に書きます。ゼロのほぼ中央に、小数点があることに気づいてください。
 小数点の左側の最初の0(赤色)が一の位です。基本的に、現れるゼロの数を減らすために変換します。
※大きな接頭語への変換(左側の接頭語に変換すること 上の【表1.4】を参照しながら!)
 練習のために1gをkgで表すと、三桁変わりますから0.001kgです。表をたどってください。
 1ngはμgで表すと、0.001μgです。
※小さな接頭語への変換(右側の接頭語に変換すること 上の【表1.5】を参照しながら!)
 1mをミリメートル(mm)で表すと、三桁変わりますから1,000mmとなります。
 10kmをメートル(m)で表すと、10,000mです。

 < 練習問題 >

 練習問題と答えをいくつか付けますから、慣れてない人は前のページを見ながらやってみてください。
(問)
問1 38mは何キロメートル(km)ですか。
問2 0.049gは何ミリグラム(mg)ですか。
問3 2.3sは何ミリ秒(ms)ですか。
問4 99.3mgは何グラム(g)ですか。
(答え)
問1 38mは、0.038km
問2 0.049gは、49mg
問3 2.3sは、2,300ms
問4 99.3mgは、0.993g