T-4 生化学実験に用いる単位と量(演習)
(その1)

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※ マニュアル本文(黒字)は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説(青字)は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
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マニュアル本文

  1:SI基本単位
 SI基本単位(メートル法単位系に基づく国際単位系SI)を表1.1に示す。
 参考:SI=Le Systeme International d'Unites

 解説:< 日常生活とSI基本単位 >
 SI基本単位は、あなた方にとって非常に身近ですよね。特に、長さ、重さ(質量)、時間は皆さん感覚的にも基準を持ってますね。さあ、それでは物質の量(モル)はどうでしょう。モルはこれからさんざんお世話になる単位ですが、いままで日常生活ではほとんど縁がなかったですよね。
 生化学実験では、これらのうち、特に長さ、質量、時間そして「物質の量」が良く出てくると思ってください。
 解説:< モルってわかんない >
 高校で化学を受けた人は、もしかしたら「え〜! モル・・・何となく聞いたことあるし、化学の時間に言葉はきいたことがあるけど、よくわからない!」と考える人もいると思います。
 よくわからないと思ってる人、残念ながらモルはどんどん出てきます。考えてみたら、著者も高校の化学ではモル濃度を理解していませんでした。大学では知ってるものとして説明が続くので相変わらず理解していませんでした。
 しかし、大学院に入り、自分で実験計画を立てるようになったら、モル濃度を理解してなかったことを忘れるくらい当たり前に使っていました。必要になったら簡単に理解できていたのです。
 モルは日常生活には出てくることはほとんど無いですが、実は覚えれば本当に簡単で、もっと大切なことは、この分野で仕事をするためには非常に大切な単位です。これから、怖がらずに気楽に覚えてください。
 解説:< SI単位の記号は大文字と小文字で意味が違う >
 重要なこととして丸暗記することがあります。それは、物理量と名称と記号を正確におぼえることです。物理量と名称は比較的楽だと思います。で、記号ですが、長さはm(小文字)であってM(大文字)ではありません。Mを長さの単位として書くことは「完全に間違い」です。「この棒の長さは3mです」という表現はあっても、「この棒の長さは3Mです」という表現はありえないということです。
 でもこれは比較的わかりやすいですが、最も良く間違い易い(実は社会生活の中でも良く出てくる間違いですが)のは、質量の記号です。上の表にはkg(kもgも小文字)とかいてありますが、よくKgとかKGとか書いてあるのを見かけます。社会生活上は、それでも見当がついて解りますから、あまり「目くじらを立てるのも大人げない」と思いますが、SI基本単位では、kgが正しく、KgやKGは明らかな間違いです。覚えておき、これからはKgやKGという表現はとらないようにしてください。
同様に、時間は小文字のs(秒)で、物質の量はmol(またはmole)です。
 さあ、大文字と小文字もしっかり区別して記憶しなさい(これもしてくださいでなく、命令ですね!)。
 注意ですが、質量の単位kgですが、これは、gと間違えやすいです。後でまた解説する予定ですが、kg(キログラム)が基本単位であって、g(グラム)ではありませんのでここで覚えておいてください。

 

 2:SI誘導単位 
   生化学によく用いられるSI誘導単位。
 ※さらに、これらの基本単位を適当に組み合せて得られる多くのSI誘導単位がある。これらのうち、生化学によく用いられるものを表1.2に示す。



 解説:<SI誘導単位って、SI基本単位を掛けたり割ったりして表せます>
 なんだか聞いたことがある「単位の名称」がならんでますよね。このうち、度(摂氏)だけは変わり者ですが、他の単位はSI基本単位を掛けたり割ったりして表してますね。SI誘導単位ですからSI基本単位で表すことができる単位なんですね。これに関しては主に物理学で学んでください。

 解説:<力って、質量と長さと時間のかけ算なの?>
 ここでは「力」を例に、簡単に考えてみましょう。表から解るように、力の単位の名称はニュートンで、記号はN(大文字)ですね。原型の項を見てください。kg m S-2 と書いてあります。これはまず、質量(kg)と長さ(m)と時間(s)が関与していると考えることができます。これから考えられることは、物理学では力を重さと距離と時間で表せると考えているわけです。
 まず、kg m S-2 とは、kg × m ×  S-2 であることを確認しておきます。つまり、どれだけの重さのものをどれだけの長さ、どれだけの時間で動かすかを力と考えているようですね。2乗だとか-2乗だとかの関係は物理学で正式に学んでください。
 このように、それぞれの単位をSI基本単位で表せると、単位間の互換性が生まれます。これはいろいろなことを考えたり、説明したりするときに便利なので、世界中の科学者が統一して使用しています。