T-3 計量器の操作法練習 (その3) |
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解説 |
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4−3:メスピペットとホールピペットの使用方法に慣れよう | |
ピペット類のうち、メスピペットとホールピペットは容積を測定するための器具です。 |
解説13:ピペット類は出したときの量が目的容積でしたね。だから、溶液をピペットから出した後、ピペットの中に水滴が残っていては正確にはなりませんね。操作の時に注意しなければならないことは、中の溶液を完全に受ける容器に出し切ることです。 |
4−4:メスピペットの目盛りの検定 | |
配布した表=メスフラスコ・メスピペットの検定=に従って、あらかじめ自分の実験ノートに表を作成しておく。 | |
各自、50mlまたは100ml容のビーカーを一つ、5mlのメスピペットを1本選択する。まず選択したビーカーの重量(容器の重量;風袋重量という)を正確に測定(小数点以下4桁まで・4桁表示のデジタル天秤の数が少ない場合は3桁表示のデジタル天秤を使用)し、直ちに実験ノートの表に記入する。次に、メスピペットを用いて脱イオン水を吸入する。排出時、目盛りの0〜2mlの範囲の2mlを自分のビーカーに正確に排出する。直ちに水入りビーカーの重量を正確に測定し、実験ノートの表に記入する。この操作を3回繰り返す。 | |
次に、上記の操作を別の2種類の範囲(たとえば1〜3mlや2〜4ml、あるいは3〜5ml)選択して、同様に2ml採り、ビーカーに正確に排出して上記と同様に添加前と後のビーカーの重量を正確に測定して実験ノートの表に記入する(表のメスピペットの目盛り検定参照)。 | |
5mlメスピペットを使うすべての操作が終了したら、実験ノートの表に従って、記入してある結果から水の重さを計算する。次にそれぞれの値を水の密度で割って、同一のメスピペットの別の範囲を使っで採った2mlの水の容積を求め、平均値を算出する。 | 解説15:水の重さと密度から水の容積を計算する方法はもうわかりますね!! でも、自信の無い人はもう一度前に戻って、どう考えるべきかを復習してください。何回も見直せば、そのうち知りたいことがどの部分に書かれているかまで覚えてしまうでしょう。この繰り返しが大切です。 |
この結果のデータを比較して、メスピペットの各目盛りの正確さを検証しなさい。 | 解説16:メスピペットの場合、どの範囲を選んでも同じだけ採れるはずですが、操作が正確でも選んだ範囲によって違う量採れてしまうことが時々あります。これは、そこまで正確に目盛りが付けられていないということでもあります。 |
5:ホールピペットの使用法練習 | |
配布した表=ホールピペット練習=に従って、あらかじめ自分の実験ノートに表を作成しておく。各自10mlのホールピペットを準備し、<メスピペットの目盛りの検定>操作と同様に脱イオン水をあらかじめ重さを測定済みのビーカーに量り取り、水の重さを求め、結果を実験ノートに記載する。この操作を20回繰り返し測定後、水の密度を計算に入れて水の容積を求める。 | 解説17:操作そのものはこれまでのメスピペットでの操作やメスフラスコでの計算方法をそのままおこなえばよいでしょう。ただし、操作を繰り返す時にビーカーに採った水を一回一回捨てる人がいますが、ビーカーから水がこぼれるほど増えたり、天秤で重量が測定できなくなるまでは、ビーカー内の水は毎回捨てないで追加していけば操作が早いことに気がついてほしいですね。時間と手間の節約ですが、これに気づくかどうかで実験が上手いか下手かがわかりますよ。同じ仕事は早く済ませるよう常に工夫しましょう。 解説18:第1回目の空のビーカーの重さを風袋重量項に記録し、ホールピペットで水を10ml入れた後の重さを添加後重量項に記録します。ここでビーカーの水を捨てずに第二回目のホールピペット操作をおこない、水が10ml入ったビーカーにそのまま追加しましょう。ということは、第一回目の添加後重量項に記録した数値がそのまま第二回目の風袋重量になりますね。したがって、第二回目以降、ビーカーの水を捨てない限り、風袋重量を別に測定する必要はありません。また、水を捨てた後は水がビーカー壁に付着した状態で風袋重量を測定すればよく、ビーカーが乾燥している必要はありませんね。このように、操作時間を節約できます。操作中は、水を捨てない限り風袋重量と添加後重量のみ記入するだけです。 |
次いで、表に従って数値を処理し、まず測定の平均値を求めなさい。さらに表に従って数値処理を続け、バラツキを表す標準偏差を求めなさい。 | 解説19:操作が終わったら、記入した表に従って計算をします。 まず水の重さを計算し、それぞれの重さを水の密度で割ると水の容積が出ます。 得られた水の容積20回分の平均値を取り、それぞれの水の容積値と平均値の差を(水の容積−平均値)の項に記入します。次に、各(水の容積−平均値)を二乗して(水の容積−平均値)2の項に記載した後、得られた二乗の値をすべて加えてS(総計(Σ))項に記入します。これを測定回数(サンプル数:n;今回は20回)マイナス1(すなわち19)で割り、平方根を求めます。これらの計算は電卓で行えば手間はかかっても難しくないはずですね。でも、PCを使ってエクセルで表を作っておけば、実測値(風袋重量と添加後重量)を入れるだけですべての計算をすることができます(参考のために筆者が作成した「計量器の操作法練習記入表のホールピペットSTDEV自動計算」を添付してあります)。 解説20:表に入れる数値の桁数ですが、天秤の測定値が小数点以下3桁の場合は小数点以下4桁目を四捨五入しましょう。計算機で計算すると桁数がたいへんな数になることが多いですね。で、この結果の桁数をそのまま表に入れている人がいますが、実測値が小数点以下3桁ですから4桁以下の数値は無意味と考えて四捨五入して良いでしょう。 解説21:標準偏差は、データの分布のばらつきを見る一つの尺度で、ここで解説を始めるとたいへんなので、詳しくは統計学の初歩で学んでください。ここで知っておいてほしいことは、平均値と標準偏差がわかれば、データの散らばり具合がわかるという性質を持った数値で、標準偏差の値が小さいほどデータのばらつきが小さく、すなわち、ピペット操作のブレが小さいことになります。 ただし誤解してほしくないことは、標準偏差の値が小さいとはあくまでも操作上のばらつきが小さいということで、正確に量れているということとは必ずしも一致しません。全部の数値が一定の誤差(ほとんど同じ誤差)で量れている場合もあるでしょう。「正確」ってすごく難しいですよ。 解説22:ピペット操作は、初心者はきちんと練習する必要があります。このため、繰り返し練習を行い、自分の操作の誤差を減らす努力をします。今回はとりあえず操作の誤差を見ることで、現在の自分の操作の腕を確認します。結果が悪くても、これから卒業するまでに練習して上手になればよいのですから。 解説23:ピペット上端部を人差し指で押さえ、中の溶液の量を微妙に制御して液量を正確に採るにはかなりの慣れが必要で、そのためにかなり訓練する必要があります。はじめは誰でも下手(へた)で、はじめから上手い人はいません。はじめに妙な癖をつけてしまうとあとで修正するのが大変です。変な癖をつけないように指導者の教えるとおりに練習しましょう。くれぐれも人と違う自分流に固執せず、初心者の時、言われたとおりの正しい操作方法を身につけましょう。 ただし変な癖がついても、たいへんなのは本人だけで、周りの人(不幸にしてあなたと同じ実験班になってしまった人)は下手(変な癖がついてるあなた)な人に操作をさせなければよいわけです。本人は実験が下手との烙印を押され、実験値を信用してもらえなくなるだけで済みます。でも、それがいやなら正しい操作法を身につければよいのです。 |
【参考】添付した「ホールピペットSTDEV自動計算」の使い方。 |
(ホールピペットSTDEV自動計算=エクセル添付表の同名タブ) |
表にはすでに例として仮の数値が入れてあります。表をそのままコピーしてコピーの方を使ってください。以後はコピーを使用していることを前提とします。 使用者が自分で記入する部分は風袋重量・添加後重量・水の密度の項です。 そのほかのセルにはすべて計算式(自動計算)が入れてあります。計算式が入れてある場所に何か入れると計算式が壊れますから、エクセルの計算式のことがわかるまでは触れないようにしましょう。わかるようになればどんどん改良して使ってください。 風袋重量と添加後重量項は小数点以下4桁に設定してあります。もし使用する天秤の桁数が小数点以下3桁であれば、小数点以下3桁に変更して使用しても良いでしょう。そのときは水の容積および(水の容積−平均値)も小数点以下3桁に変更した方が良いでしょう。 桁数の変更方法はエクセルの使用方法(適当な参考書)を参照してください。操作そのものは簡単です。 注意:20回分の数値を全部入れる前は、平均の計算値が狂うため水の容積項より右側のセルは正常な数値を示しません。気にせずに風袋重量と添加後重量を間違わずに入れてください。 |