T-1 生化学系の実験室での心得
(その3)

 〜実験を安全に行うために〜

 

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※ マニュアル本文は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
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 マニュアル本文

 解説

 5:実験の進め方  
 5−1:実験前  
 実験台の上と周囲の整理整頓を行うこと。
 白衣に着替え、身支度をして椅子、持ち込み手荷物(鞄など)、身の回りを片付ける。
 乾燥棚の洗浄・乾燥済みガラス器具を当番を中心に全員でかたづける。
 実験台上を水拭きし、手を洗って開始を待つ。

 解説27:実験室入室前に更衣スペースで白衣に着替え、身支度を整えてから入室します。
 更衣スペースが無い場合は指導教員の指示に従い、たとえば実験開始前に実験室で身支度を整え、手荷物などは決められた方法で実験の支障がないように収納します。

 解説28:身支度が整った後、前日までに使用して洗浄乾燥済みの器具類を所定の場所に片付けます。
 片付けることは、どの器具がどこに収納されているか知るための重要な作業です。特にその実験室を使用する初心者にとって、非常に重要な知識となります。使用したことが無い器具を片付けることは特に重要で、教員など、片付け方を知っている人に質問してください。あとで、その実験器具を使うことになったときに使用する器具の収納場所がわかります。

 解説29:実験台の上を指示されている方法で清掃します。学校の実験室は自分専用ではないので前に誰がどのような実験を行っているかわかりません。したがって、汚れていることもあります。微生物を扱う場合や、動植物の細胞、遺伝子などを扱う場合など、特に注意する必要があるでしょう。

 5−2:実験操作中   
 実験台の上は実験に必要なもののみを危険が無いように、かつ合理的に配置する。

 解説30:重心の高いガラス器具など倒れやすいもの、こぼれると危険な試薬など、実験中は様々な危険が想定できます。まず、これを予測する訓練をしましょう。
 常に「これは危険」、これは「おおきな危険はない」ということを考えながら配置し、取り扱います。慣れれば大きな負担にならないかもしれませんが、はじめのうちは考えながら実施してください。

 解説31:どのように実験器具類を配置すれば合理的かは実験の経験を積めば自然にわかることですが、初めのうちは自分で考えたり、先生の指示に従って学んでください。最大のヒントはマニュアルをよく理解し、次に何をすべきかを予測しながらおこなうことです。

 解説32:重心の高いガラス器具など倒れやすいもの、こぼれると危険な試薬など、実験中は様々な危険が想定できます。まず、これを予測する訓練をしましょう。
 常に「これは危険」、これは「おおきな危険はない」ということを考えながら配置し、取り扱います。慣れれば大きな負担にならないかもしれませんが、はじめのうちは考えながら実施してください。

 解説33:どのように実験器具類を配置すれば合理的かは実験の経験を積めば自然にわかることですが、初めのうちは自分で考えたり、先生の指示に従って学んでください。最大のヒントはマニュアルをよく理解し、次に何をすべきかを予測しながらおこなうことです。

 実験台の上は実験中常に整理整頓を行い、不要の物があってはならない。

 解説34:実験台の上は常に整理整頓が必要です。使用済みの器具は可能な限りすぐに片付ける。
 筆者の経験では、初心者が実験ノートとボールペン1本以外の実験資料や、筆記用具など本来不要なものに実験台のスペースを取られて、本当の目的である実験操作はやりにくそうに隅の狭い場所で行っている光景を時々見かけます。
 基本は必要な事項はあらかじめ実験ノートに記載しておき、時々必要になる可能性がある資料類は実験台の操作面には置かないことです。

 解説35:特に初心者は真剣に操作をするほど余裕が無くなり、周りが見えなくなります。仕方のないことですが、一つの操作が終わり、気持ちの上で一区切りがついたとき、整理整頓を思い出して自己点検してみてください。
 また、最初のうちは先生から指摘されることもあると思います。

 使用するガラス器具類の傷、割れには十分注意する。  解説36:ガラスは割れますが、良いところは、外見から割れていることがわかりやすいということです。
 従って、これから使用するガラス器具は、必ず一度落ち着いて割れがないことを確認してください。
 割れたまま使用すると危険な試薬が漏れたり、取扱中に割れたガラスの破片や入っていた試薬により大きな怪我をします。
 使用する試薬類は精製された物で、危険な物を含むので使用には十分注意する。  解説37:実験室は自然界では考えられない高純度、高濃度の物質を扱う場所です。危険物はもとより、危険度は低くても、人体に対して悪影響をおよぼす物質がたくさんあります。 
  5−3:実験操作終了後  
 実験で生じた廃液類は指示に従って処理する。むやみに排水中に流すことは公害の元になるばかりでなく、薬品同士の反応により思わぬ事故が起こる可能性がある。
 自分で使用した実験器具は、次に使用する人のためにルール通りにきれいに洗浄・乾燥する。
 実験の結果発生したゴミは所定の分別をして捨てる。

 解説38:実験に一区切り付いたところで生じた廃液や使用した実験器具類の後始末をします。方法は基本的にすべて指示に従います。
 使用器具は指示された方法で洗浄します。生じた廃液類は慣れるまで必ず指示を受けてください。

 解説39:廃液処理方法は各実験施設ごとにそれぞれの事情で異なるはずです。筆者の経験では、酸およびアルカリ類は、中和すれば排水として流すことができます。しかし、重金属類や有機溶媒など、中和しただけでは排水として流せないものも多いはずですが、必ず流せない理由があります。初めのうちは必ずその施設での処理方法の指示を受け、理由もきちんと知っておく必要があります。

 解説40:重金属や有機溶媒を含む廃液は、一般に産業廃棄物処理業者に依頼するようです。契約している業者の指示する方法で危険が無いように保存しなければなりません。
 また、処理には費用が発生すること、環境に悪い影響を与えることなどを考え、決して無駄に発生させないことが必要です。

 解説41:むやみに排水として流すことで、個々に処理すれば問題ない試薬でも、排水中で混合して反応をする危険性があるものもあります。また、排水処理場では活性汚泥によって処理されることが多いのですが、強い酸性やアルカリ性では活性汚泥が働きませんから、中和することは大切です。
 また、少量だからと有機溶剤を気軽に排水中に捨てていたため、水に溶けない比重の重い溶剤が配管の途中に沈殿して滞留し、滞留した部分の塩化ビニル製パイプを溶かして破損させ、階下の事務所に廃液が流出して大きな問題になったことがあります。

 解説42:自分で使用した器具類は自分で元に戻します(洗浄・乾燥します)。使用した本人がもっとも良く使用状況を承知していますから、元に戻す方法をもっとも確実に承知しているはずです。
 実験器具は次に、誰がどのような用途で使用するかわかりません。したがって施設ごとに洗浄のルールが決められています。
 器具の使用者は、自分の目的に合わせて必要があればさらに洗浄したり、処理したりして使用することになりますが、前提はルール通りに洗浄されていることです。

  6:実験時間終了後  
  実験終了後、班単位で後始末を行う。
 実験台の引き出しに私物を残さず片付ける。
 実験台の上を水拭きし、使用した椅子の脚のゴミを雑巾で拭い、実験台の上に乗せる。
 手洗いをする。
 掃除は当番制とし、指定の方法で掃除を行う。

 解説43:実験終了後の実験室の後始末は実験施設ごとにルールがあります。このルールに従ってください。
筆者の所属していた実験室のルールは上記です。

 解説44:実験室の掃除は絶対に必要です。実験室は常に清浄に保っておく必要があるからです。ほこりだらけの実験室では信頼できるデータは得られません。また、実験室は所属する組織の将来を担う研究をしますから、外部の人間を気軽に入れることはできません。
 では、誰が清浄に保てばよいのでしょうか。清掃員の人件費が出せる実験施設があるとします。雇う清掃員は実験室の特殊性を理解し、それぞれの実験設備を承知している必要がありますね。これを要求するのは現実的ですか。やはり実験者本人が清掃するのがもっとも合理的ですね。