T-5 溶液の調製1
(その7−1

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※ マニュアル本文(黒字)は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説(青字)は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
※ まとまったマニュアル本文は、「マニュアル本文
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  イ):実験ノートにA〜F溶液を調製するための操作手順(マニュアル)を詳細に記載し、操作に必要な試薬と器具名を割り出して、まとめて記載する。
 =ノートへの記載方法は操作1の1)と同じくア)とイ)をまとめた各試薬ごとの操作手順を見開き1ページを使用して記載する。=

 A:1%(w/w) NaCl溶液を30g調製するための操作手順(マニュアル)を詳細に記載し、操作に必要な試薬と器具名を割り出して、まとめて記載する。
 解説:<実験手順フローチャート図:A液>
 A:1%(w/w) NaCl溶液を30g調製しなさい。

  *1:3%(w/w)溶液を10g採って水を加えて30gにする。

 @ 50mlビーカー(重量測定済み・天秤上)

 ※50ml容ビーカー(または50ml容三角フラスコ)
 ※電子天秤 1台

 50ml容ビーカーは希釈溶液を調製するために使用します。最終的に30gという重量を測定しますから天秤を使い、風袋重量を測定しておく必要がありますね。風袋(風袋:T-3 計量器の操作法練習(その3)参照)という言葉はもうわかりますね。
 なぜ50ml容を選択したのかはわかりますか?。最終的に30gにしますから、容積を考えるとこれ以上大きな容器は不適当ですね。ビーカー以外の容器も考えられます。扱う試料は溶液ですから、容器の口が小さくてもピペット使用に差し支えが無ければ問題ありませんから、たとえば50ml容程度の三角フラスコも使用できますね。

 A ↓+10g 3%(w/w)溶液(駒込ピペット使用)

 ※3%(w/w)溶液 10g以上 aで調製した溶液
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組
 ※ピペットホルダー 1台

 用意したa溶液を駒込ピペット(またはパスツールピペット等も可能)で10g採ります。もし、過剰にはいったとしても、この段階では他の成分は混合してないので過剰分を駒込ピペットで回収することができますね。

 B    ↓+水
 30gに合わせる(駒込ピペット使用)
      ↓
    撹拌

 ※水 約20g以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組

 ○ 水を加えて溶液の重量を30gに合わせます。駒込ピペット(または同等品)を用いれば良いでしょう。
 ○ さて、Aでも駒込ピペットを使いましたね。同じ駒込ピペットだからここでもAで使用した駒込ピペットを使用できますか。もしできれば器具の節約になりますね。使用できるかどうかの考え方は、同じ溶液に使用するかどうかです。ここではAでa溶液をとりましたがBでは希釈用の水に使用しますね。したがって、Aで使用した駒込ピペットは使用できませんね。別の駒込ピペットを使用します。
 ○ また、Aではa溶液を過剰に入れてしまっても過剰分を回収できましたが、Bでは、もし希釈水を過剰にいれてしまったら(30gを超してしまう)、容器の中の溶液を回収できるでしょうか?
 どう考えたら良いでしょう。Aでは入れた溶液のみが容器にあるので同じ液を回収できますが、Bでは、a溶液と希釈水がすでに混合してますね。だから希釈水だけの回収は不可能ですね。つまり、Bでは絶対に過剰に入れることができない、ミスはできない、ということですね。もし希釈水を入れすぎて30gを超えてしまったら、もう一度@からやり直しです。注意しましょう。
 ○ もう一つ考えることがあります。最後の撹拌操作です。これまでは撹拌棒を使用しましたね。ここでは、50ml容のビーカーに30gの溶液が入っていますね。実は、実際にやってみるとわかりますが、注意してビーカーを揺らして回転させれば撹拌棒を使用しなくても撹拌が可能です。したがって、必ずしも撹拌棒は必要ありません。注意してビーカーを揺らして回転させましょう。もちろん撹拌棒を使用してもよいですよ。
 さあ、これでa溶液を使用するA溶液の調製ができましたが、もう一つの調製方法がありましたね。

  【準備が必要な試薬と器具】

 ※50ml容ビーカー(または50ml容三角フラスコ)
 ※電子天秤 1台
 ※3%(w/w)溶液 10g以上 aで調製した溶液
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 2組
 ※ピペットホルダー 1台
 ※水 約20g以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)

  *2:3%(w/v)溶液を10ml採って水を加えて30gにする。

 @ 50mlビーカー(重量測定済み・天秤上)

 ※50mlビーカー 1個

 この方法の*1との違いは、@の天秤を使用せず、すべて容量で行っているということです。その他の操作は*1:と同じですね。

 A    ↓+10ml 3%(w/v)溶液(ホールピペットまたはメスピペット使用)

 ※10mlホールピペットまたはメスピペット 1本
 ※ピペットホルダー 1台
 ※3%(w/v) NaCl溶液 bで調製した溶液

 この方法の*1との違いは、Aの3%(w/w)溶液を10g加える代わりに3%(w/v)溶液を10ml加えることですね。溶液を10g取る代わりに10ml取るわけですから、天秤を使用する代わりにホールピペットまたはメスピペットを使用します。そのほかの操作は*1と全く同じです。

 B    ↓+水
 30gに合わせる(駒込ピペット使用)
      ↓
    撹拌

 ※水 約20g以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組

 水を加えて溶液の重量を30gに合わせます。駒込ピペット(または同等品)を用いれば良いでしょう。*1のBでも話題にしましたが、Aで用いた駒込ピペットは使用できませんね。もちろん水を入れすぎたら@からやり直しです。撹拌は、注意してビーカーを揺らして回転させれば撹拌棒を使用しなくても可能です。

 ※ 調製した溶液は、保存する必要ないのでビーカーに入れたままとする。

 ※ 調製方法は*1でも*2でもよい。

 【準備が必要な試薬と器具】

 ※50ml容ビーカー(または50ml容三角フラスコ)
 ※電子天秤 1台
 ※3%(w/v)溶液 10ml以上 bで調製した溶液
 ※10ml容ホールピペットまたはメスピペット 1本
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組
 ※ピペットホルダー 1台
 ※水 約20g以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)

 B:1%(w/v) NaCl溶液を30ml調製するための操作手順(マニュアル)を詳細に記載し、操作に必要な試薬と器具名を割り出して、まとめて記載する。
 解説:<実験手順フローチャート図:B液>
 B:1%(w/v) NaCl溶液を30ml調製しなさい。

 

  *1:3%(w/w)溶液を10g採って水を加えて30mlにする。

 @ 50mlメスシリンダー(重量測定済み・天秤上)

 ※50ml容メスシリンダー
 ※電子天秤

 ここは容器がビーカーからメスシリンダーに変わった他はA:とまったく同じですね。
 ただし、注意があります。容器がビーカーからメスシリンダーに変わりました。形状から考えてわかるように、メスシリンダーはビーカーより重心が高いですね。天秤の上で倒さないように注意しましょう。

 A   ↓+10g 3%(w/w)溶液(駒込ピペット使用)

 ※3%(w/w)溶液 aで調製した溶液
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組
 ※ピペットホルダー 1台

 この操作はA:の*1のAとまったく同じですね。

 B メスシリンダーを天秤からおろす

 以後は実験台上での操作になります。

 解説:<電子天秤の上での操作は必要最低限にとどめましょう>
 この操作は重要です。メスシリンダーを天秤上に載せたまま次の水を加える操作(30mlに合わせる)をやることもできますが、水を加えるときのショックなどで天秤の重さを感知するセンサー部分に余分な負担をかけることはできるだけ避けましょう。また、水を操作するのでこぼす可能性があります。デジタル天秤に水をこぼすことは許されませんから、こぼす恐れのある操作を天秤上で行うことは厳禁です。

 C    ↓+水
 30mlに合わせる(駒込ピペット使用)
      ↓
    撹拌

 ※水 20ml以上
 ※50〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組

 水を加えて溶液の容量を30mlに合わせます。駒込ピペット(または同等品)を用いれば良いでしょう。A:の*1のBでも話題にしましたが、Aで用いた駒込ピペットは使用できませんね。もちろん水を入れすぎたら@からやり直しです。
 撹拌は、容器がビーカーの場合より細長いため、こぼしにくいのでより楽にできると思います。周囲に注意してぶつけたりこぼしたりしないように撹拌してください。

 解説:<容器がメスシリンダーなど測容器の場合、撹拌棒は使用しません>
 容器がビーカーの場合は撹拌棒の使用もできましたが、メスシリンダーの場合は、ガラス棒を用いて撹拌すると、撹拌棒がメスシリンダー内壁とぶつかったりこすれたりするわけですから、メスシリンダー内壁に傷が付きます。従って、メスシリンダーの容積が変化しますから使用してはいけません。

  【準備が必要な試薬と器具】

 ※50ml容メスシリンダー
 ※電子天秤 1台
 ※3%(w/w)溶液 aで調製した溶液
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 2組
 ※ピペットホルダー 1台
 ※水 約20ml以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)

  *2:3%(w/v)溶液を10ml採って水を加えて30mlにする。

 @50ml容メスシリンダー

 ※50ml容メスシリンダー

 この方法の*1との違いは、@の天秤を使用せず、すべて容量で行っているということです。その他の操作は*1:と同じですね。

 A ↓+10ml 3%(w/v)溶液(ホールピペットまたはメスピペット使用)

 ※10mlホールピペットまたはメスピペット 1本
 ※3%(w/v) NaCl溶液 10ml以上 bで調製した溶液

 操作はA:のに*2のAと同じですね。

 B    ↓+水(約20ml)
 30mlに合わせる(駒込ピペット使用)
      ↓
    撹拌

 ※水 約20ml以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)

 水を加えて溶液の容量を30mlに合わせます。駒込ピペット(または同等品)を用いれば良いでしょう。A:でも話題にしましたが、Aで用いた駒込ピペットは使用できませんね。もちろん水を入れすぎたら@からやり直しです。
 撹拌は、容器がビーカーの場合より細長いため、こぼしにくいのでより楽にできると思います。周囲に注意してぶつけたりこぼしたりしないように撹拌してください。

  【準備が必要な試薬と器具】

 ※50ml容メスシリンダー 1本
 ※3%(w/v)溶液 10ml以上 bで調製した溶液
 ※10ml容ホールピペットまたはメスピペット 1本
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組
 ※ピペットホルダー 1台
 ※水 約20ml以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)

 ◎ 調製した溶液は、保存する必要ないのでビーカーに入れたままとする。

 ◎ 調製方法は*1でも*2でもよい。

 C:0.1mol/l NaCl溶液を25ml調製するための操作手順(マニュアル)を詳細に記載し、操作に必要な試薬と器具名を割り出して、まとめて記載する。
 解説:<実験手順フローチャート図:C液>
 C:0.1mol/l NaCl溶液を25ml調製しなさい。

 

   0.5mol/l NaCl溶液を5ml採り、水を加えて25mlにする。

 実験台上で、ホールピペット(またはメスピペット)で0.5mol/lのNaCl溶液を5ml採り、50mlメスシリンダーに5ml入れる。続いて駒込ピペットで水を加えて25mlに合わせて注意深く容器を回転させて撹拌する。操作手順は以上で終了。すべてこれまでの体験操作で行ったことで、特に問題は無いはずですね。
 ここまで慣れてくると、モル濃度溶液を扱うのは本当に簡単でしょ!

  【準備が必要な試薬と器具】

 ※50ml容メスシリンダ− 1本
 ※5ml容ホールピペットまたはメスピペット 1本
 ※0.5mol/l NaCl溶液 5ml以上 cで調製した溶液
 ※駒込ピペット(または同等品+スポイト) 1組
 ※ピペットホルダー 1台
 ※水20ml以上
 ※50ml〜100ml容ビーカー 1個(希釈用の水を入れる容器として使用)