T-5 溶液の調製1 |
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<操作2> |
操作1で調製した溶液を用いて次の各濃度の溶液を調製する。 A:1%(w/w) NaCl溶液を30g調製する。 B:1%(w/v) NaCl溶液を30ml調製する。 C:0.1mol/l NaCl溶液を25ml調製する。 D:1%(w/w) D-Glucose 溶液を5g調製する。 E:1%(w/v) D-Glucose 溶液を5ml調製する。 F:0.1mol/l D-Glucose 溶液を5ml調製する。 |
1):まず、<操作1>と同様に前準備のために実験ノートにマニュアルを作成する。 |
ア):A〜F溶液を調製するためには,操作1で調製したa〜fの溶液のうち、どれを使えばよいかを考え、実施可能な方法を選択し、必ず自分の実験ノート上に計算の式をすべて記載し、計算結果を記録する。 |
解説:<A〜F溶液調製に必要な操作1で調製した溶液は?> |
まず何を考えるべきか。<操作1>で調製したa〜fの溶液のどれを使うかですね。 a〜cの溶質はNaClで、d〜fはD-Glucoseですから、まずA〜Cを調製するためにはa〜cを選択ですね。そしてD〜Fはd〜fですね。それでは次に個別に考えてみましょう。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:A> |
A:1%(w/w) NaCl溶液を30g調製しなさい。 |
使用する溶液の選択。 a〜cのどれかですね。どれが良いか、どう考えるべきでしょう?。 |
@ はじめに何を作るかを確認しましょう。作るのは1%(w/w)の液ですね。1%(w/w)とは溶液100g中に1gの溶質が含まれる液ですね。これを30g作る。 ということは、「できあがりの溶液30g中に0.3gのNaClが含まれる溶液」ですね。これに気づくことがまず第一です。繰り返しますが、NaClが0.3g入っていれば良い訳です。 |
A 次に作る元になる溶液はどうでしょう?3%(w/w) NaCl溶液、3%(w/v) NaCl溶液、0.5mol/l
NaCl溶液がありますね。 それぞれの溶液を見てみましょう。 3%(w/w)溶液は、溶液100g中に溶質3gが含まれる液ですね。これが100gある。 3%(w/v)溶液は、溶液100ml中に溶質3gが含まれる液ですね。これが100mlある。 0.5mol/l 溶液は、溶液1g中に溶質が0.5mol(溶質がNaClの場合は29.22g)含まれる溶液ですね。これが100mlある。 |
B 3種類の溶液のどれかを選択して、@にある通り、NaClを0.3g取って、溶液量を30gにすれば目的溶液ができますね。 |
※じゃどの溶液を選択すべきでしょうか。それぞれ考えてみましょう。えっ!考えるって、何を考えたら良いの? どの溶液をどれだけ採ったら溶質が0.3gはいっているだけの溶液が採れるかを考えたらいいでしょう!。・・・・えつ?。わからない??? それじゃ、具体的に考えてみましょう。 |
◎1:3%(w/w)溶液は、溶液100g中に溶質3gが含まれる液ですね。だから、この溶液を「10g」採れば、その中に0.3gの溶質を含みますね。 調製する溶液量は30gですから、3%(w/w)溶液を10g(NaClが0.3g含まれてますよ!)採って水を加えて30gにすれば、この溶液30g中に溶質が0.3gはいった溶液、つまり0.3g/30gだから1g/100gすなわち1%溶液を30g作ったことになりますね。さあ、できました。 |
◎2:3%(w/v)溶液は、溶液100ml中に溶質3gが含まれる液ですね。だから、この溶液を10ml採れば、その中に0.3gの溶質を含みますね。 で、調製する量は30gですから、3%(w/v)溶液を10ml採って水を加えて30gにすれば、この溶液30g中に溶質が0.3gはいった溶液、すなわち1%溶液を30g作ったことになりますね。さあ、この方法でもできました。 |
◎3:では0.5mol/l
溶液ではどうでしょう?。この溶液は1g中に溶質が0.5mol(溶質がNaClの場合は29.22g)含まれる溶液ですね。この溶液を何ml採れば0.3gのNaClを含む溶液量になるでしょうか。 計算してみましょう。 溶液量1リットル:29.22g(NaCl)=溶液量Xリットル:0.3g(NaCl)という関係になりますね。だからXリットルは Xリットル=1リットル×0.3g/29.22g=0.010266940・・・・リットル→ 10.266940・・・・mlという割り切れないあたいになるため、実験では採るのがむずかしいですね。 |
結論:ということで、この方法は良くなさそうですね。◎1または◎2の方法が良さそうですね。 ◎1:3%(w/w)溶液を10g採って水を加えて30gにする。 ◎2:3%(w/v)溶液を10ml採って水を加えて30gにする。 ◎1でも◎2でも良くて、実験室の設備と、実験者の好みとから選択すればよいでしょう。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:B> |
B:1%(w/v) NaCl溶液を30ml調製しなさい。 |
これはA:と同じ考え方で良いですね。調製量が30mlになっただけですから、 結論: △1:3%(w/w)溶液を10g採って水を加えて30mlにする。 △2:3%(w/v)溶液を10ml採って水を加えて30mlにする。 のいずれかで良いでしょう。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:C> |
C:0.1mol/l NaCl溶液を25ml調製しなさい。 |
モル濃度の溶液ですね。%濃度の溶液は上のA:で考えましたね。わかれば本当に簡単ですけど、慣れないと結構めんどうではありませんか? 実は、モル濃度溶液では、元の溶液に同じモル濃度溶液を使えばものすごく簡単です。 元の液として0.5mol/l 溶液を使います。 考え方は、0.5mol/l→0.1mol/lにするわけですから、濃度が1/5にすればよいわけですね。 だから、5倍に薄めてやれば良いのです。これを「5倍希釈する」と言います。 5倍希釈するわけですから、100mlを5倍希釈するとは、500mlにすればよいわけです。 調製量は25mlですから、5倍希釈した結果25mlになれば良いので簡単ですね。 |
結論:0.5mol/l
溶液を5ml採り、水を加えて25mlにすれば良い。 どうです!モル濃度溶液の方が簡単であることがわかりましたか?モル濃度溶液は便利です。 5倍希釈液の作り方は、元の液を1採ったら、これに水を加えて5の量にすればよい。 |
解説:<溶液を希釈するときの計算間違い> |
私の経験で、学生がよく間違えるのは、5倍希釈だから元の液1にその5倍の水を加えちゃう。ん〜!ちょっと考えて!!元の液1に水を5加えると全部で6になるよね。これって、6倍希釈でしょ!!。ということです。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:D> |
D:1%(w/w) D-Glucose 溶液を5g調製しなさい。 |
使用する溶液の選択。 d〜fのどれかですね。A:と同じ考え方で良いでしょう。再度練習してみましょう。 |
@ 何を作るか確認します。作るのは1%(w/w)の液ですね。1%(w/w)とは溶液100g中に1gの溶質が含まれる液ですね。これを5g作る。ということは、できあがりの溶液5g中に0.05g(50mg)のD-Glucoseが含まれる溶液ですね。 |
A 作る元になる溶液を確認します。5%(w/w)
D-Glucose 溶液、5%(w/v) D-Glucose NaCl溶液、0.5mol/l D-Glucose
溶液がありますね。それぞれの溶液を見てみましょう。 5%(w/w)溶液は、溶液100g中に溶質5gが含まれる液ですね。これが100gある。 5%(w/v)溶液は、溶液100ml中に溶質5gが含まれる液ですね。これが100mlある。 0.5mol/l 溶液は、溶液1g中に溶質が0.5mol(溶質がD-Glucoseの場合は90.09g)含まれる溶液ですね。これが100mlある。 |
B 3種類の溶液のどれかを選択して、D-Glucoseを0.05g分の溶液量を取り、これに水を加えて溶液量を5gにすれば目的溶液ができますね。 |
▽1:5%(w/w)溶液は、溶液100g中に溶質5gが含まれる液ですね。だから、この溶液を1g採れば、その中に0.05gの溶質を含みますね。調製する液量は5gですから、この溶液を1g採って水を加えて5gにすれば0.05gのD-Glucoseを含む溶液、すなわち、1%(w/w) D-Glucose 溶液が5gできますね。 |
▽2:5%(w/v)溶液は、溶液100ml中に溶質5gが含まれる液ですね。だから、この溶液を1ml採れば、その中に0.05gの溶質を含みますね。調製する液量は5gですから、この溶液を1ml採って水を加えて5gにすれば0.05gのD-Glucoseを含む溶液、すなわち、1%(w/w) D-Glucose 溶液が5gできますね。 |
▽3:0.5mol/l 溶液ではどうでしょう?。この溶液は1g中に溶質が0.5mol(溶質がD-Glucoseの場合は90.09g)含まれる溶液ですね。この溶液を何ml採れば0.05gのNaClを含む溶液量になるでしょうか。これは計算しなくてもC:と同様使用が難しいことがわかりますね。 |
結論:ということで、▽1または▽2の方法が良さそうですね。 ▽1:5%(w/w)溶液を1g採って水を加えて5gにする。 ▽2:5%(w/v)溶液を1ml採って水を加えて5gにする。 ▽1でも▽2でも良くて、実験室の設備と、実験者の好みとから選択すればよいでしょう。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:E> |
E:1%(w/v) D-Glucose 溶液を5ml調製しなさい。 |
これはD:と同じ考え方で良いですね。調製量が5mlになっただけですから、 結論:▲1:5%(w/w)溶液を1g採って水を加えて5mlにする。 ▲2:5%(w/v)溶液を1ml採って水を加えて5mlにする。 のいずれかで良いでしょう。 |
解説:<溶液調製に必要な溶液選択と計算:F> |
F:0.1mol/l D-Glucose 溶液を5ml調製しなさい。 |
モル濃度の溶液ですね。C:と同じで、元の溶液に同じモル濃度溶液を使えばものすごく簡単です。 元の液として0.5mol/l 溶液を使います。0.5mol/l→0.1mol/lにするわけですから、5倍希釈します。 調製量は5mlですから、5倍希釈した結果5mlになれば良いので簡単ですね。 結論:0.5mol/l 溶液を1ml採り、水を加えて5mlにすれば良い。 |
解説:<溶液の濃度を変えるには、高濃度の原液を希釈して、低濃度の溶液を作る> |
さあ、これらの結果から、何かに気づきませんか? a〜fの溶液を元にしてA〜Fの溶液を調製するためにやることは、すべて希釈ですね。 じゃ、濃縮は?実は、現在の実験技術では、バイオの世界で濃縮することはきわめて難しいのです。 濃縮するための簡単な方法は、エネルギーを使って水分を蒸発させて・・・という方法がよく使われます。しかし、生物由来の物質の大部分が熱に弱く、熱をかけると変化しやすいものがおおいため、生体関連試料に熱をかけることが難しいのです。熱をかけずに、かつ、簡単に安価に行える有効な濃縮方法はありません。 したがって、水溶液の濃度を変えることが容易にできるのは特殊な場合を除いて高濃度溶液を低濃度溶液にすることしかできません。 |