T-3 計量器の操作法練習
(その2)

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※ マニュアル本文は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
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マニュアル本文

 解説

  4−2:メスフラスコの検定補正  
 2本の100mlメスフラスコを用い、それぞれをAおよびBとして完全に乾燥していることを確認してから、それぞれの重さ(風袋重量)を測定(小数点以下4桁まで測定)し、配布してあるプリントの表に従って実験ノートに作成した表に記入する。
 次に、脱イオン水を正確に標線まで満たし、標線より上の部分についている水分を綿棒などを用いて吸い取ってから再び重さ(添加後重量)を測定(小数点以下4桁まで測定)し、実験ノートに記入する。
 実験ノートの表に従って水の重量を計算し、実験ノートの表に記入する。

 解説6:実験ノートには実験前までに結果を記入するための表を作成しておきなさい。表は教員が配布するプリントの書式に従えばよいでしょう。

 求めた水の重さから水の容積を求め、メスフラスコの標線までの容積とする。このときに必要な知識は、水の重さと容積の関係を知ることである。水の重さと容積の関係は水の密度を考えればよい。水の密度(ρ) を表す単位は g/cm である。これを見れば、密度とは1立方センチメートル当たりの水の重さであることがわかる。  解説7:さて、ここで算数や物理が苦手なあなたは「????・・・・」となるでしょう。それはすべて、あなたに算数や数学や物理を教えた小学校から高校までの先生が悪いのです。だって、あなたがわかるまで教えなかったのですから!。まさかあなたが「はじめからそんなの嫌いだから覚えたくない」なんて大ばかな、最低の考えで自分から理解しようとしなかったなんてことがあるわけ無いですよね!!。だから今までの先生が悪かったのです。でも、まだ十分に取り返すことができます。あなたにやる気さえあれば!。
 いくつかのことを丸暗記しなさい。「してください」ではなく、「しなさい!(命令)」です。
 これからもこんな命令形の約束事が出てきます(数少ないですが)からそのつもりで。

  【参考】g/cmの意味を知る上で丸暗記すること

 gとはグラムと読み、質量(重さ)を表す単位です。知らない人はいないでしょう。
 cmとはセンチメートルと読み、長さを表す単位です。これも知らない人はいないでしょう。
 で、本当は問題になりそうなのが「  」と「/」ですね。
 この意味を丸暗記しなさい。次に出てきたときは、初めのうちはいつもていねいに思い出しなさい。
 A:それでは先に「  」から説明しましょう。これまで何回も見たことはあるでしょう。ただし、多いのは「」ではなくて「」ですよね。cmとかmとかの後に2や3の数字が小さい字でななめ上についてますね。 はジジョウ(二乗) はサンジョウ(3乗)と読みます。まあ、この程度は知ってるでしょう。
 二乗や三乗の意味は何でしょうか?cmとかmとかを2回または3回「掛ける」という意味です。ここからもうよくわからないと思う人もいるでしょうね。だって、cmやmをなんで掛けることができるの?????。それも何回もさ!!、そんなの無理だ・・・・・。
 そう、まさにその通り、無理です。なので、ここで大切なことを覚えてください。
まず第一に、二乗や三乗は平面や立体を表すための「暗号」で「記号」で、「約束事」だということです。第二番目に、まだもう一つ本当に大切なことが隠れています。だって、cmやmを掛けるって何なのさ・・・???ですね。実は、cmやmやgの前に、1が隠れています。つまり、cmと書いてあるのは1cmのことで、mと書いてあるのは1mのことです。いちいち面倒だから、1の場合のみ必ず省略します。もう一度まとめてみましょう
 cmの二乗とは、1cmを2回掛けることです。つまり、平面を表し、縦(1回目)と横(2回目)を掛けることですね。縦と横を掛けると面積になります。
 cmの二乗( cm )の読み方は「平方センチメートル」です。
 1cm×1cmは1平方センチメートルですが、単位を表すときは、1を省略して cm と書きます。
 同様に、cmの三乗とは、1cmを3回掛けることですね。二乗より一つ増え、縦と横にさらに高さを掛けることです。これは立体を表しますよね。縦と横と高さを掛けると立方体になりますね。
 cmの三乗( cm )の読み方は「立方センチメートル」です。
 1cm×1cm×1cmは1立方センチメートルですね。単位を表すときは1を省略して cm と書きます。ちなみに、1cm は、1ccや1mlと実質的に同じです。定義上少し違いますが、そんなことはここではどうでもいいです。
 この二つを自分の頭の中でイメージしてください。面積と立体です。そうして、この暗号が出てきたらこのイメージを思い出してください。

B:/は「スラッシュ」または「パー」と読みます。この場合(水の密度 g/cm )の意味は、
@「水が cm 当たり何グラム(g)か」ということです。この説明だけでわかれば簡単ですね。
A別の言い方をすると、パ−「 / 」の前に書いてあることをパ−「 / 」の後ろに書いてあることで割るということです。つまり、割り算のマークです。1gを1cm で割ることで、割り算のマークは「÷」だけど、これと同じで、むしろ、「/」の方がよく使われるのでこっちで覚えておきましょう。
Bこれでもわかりにくいかな!ではもっと感覚的に考えてください。
 水が1mlあります。1mlってどのくらい?
 そこで上の知識を生かします。1mlは1ccや1cmと実質同じでしたね。で、1cm は1cmを縦×横×高さという風に3回かけるという意味でしたね。ここではこのことをもう一度上の文をていねいに読み直して、思い出しましょう(この努力が必要ですよ!繰り返して覚えることです)。
 で、3回かけるって何?!・・縦1cm×横1cm×高さ1cmの立方体という意味だと上に書いてありましたね。それでは、これを頭の中で作ってみましょう。イメージできましたか?
 それではこの立方体を手に持ってみてください。この重さが何gあるの・・?ってのが g/cm の意味です。つまり、「縦1cm×横1cm×高さ1cmの立方体が何gか」ってことですね。丸暗記しなければならないのは、
[ / ]とは、「/の後(の容積)」当たり「/の前(の重さ)」です。ただ、この場合は後が容積で、前が重さでしたが、いろいろな単位が「 / 」の前と後にくるので、慣れるまではそのたびに(「/の後」当たり「/の前」)を確認しましょう。丸暗記しておけば、こんなことに時間はかかりませんから、いちいち確認してもたいしたことありません。慣れるまでです。

C:次に、ついでに密度についてさらに考えてみましょう。
 この立方体(縦1cm×横1cm×高さ1cmの立方体)を水でイメージ(・・・小さいですね・・・)し、これをさらに手のひらに載せてみてください。どうかな?水ですよ!!(すぐに手の上でビチャビチャになっちゃって水で立方体なんで無理だ!!そりゃわかるけどさ、でも頭のなかでならできるよ!)
 次に、この手の上の水の重さを考えましょう。今、縦1cm×横1cm×高さ1cmの水が手の上に乗ってるんですよ!
 おおざっぱに言うと、手の上の水の重さは1gです。さあ、手の上の水の重さを1gとイメージしてください。これが 1g/cm つまり、「1cm で1gの重さ」ということです。
 次に、今イメージした縦1cm×横1cm×高さ1cmの水と全く同じ大きさの鉄の塊が手の上に乗っていることをイメージしてください。急に重くなるでしょう。これは同じ大きさでも、重さが違うから当たり前ですよね。
 それじゃ今度は縦1cm×横1cm×高さ1cmの発砲スチロールが手の上に乗ってることをイメージしてください。どう?すごく軽いでショ!発砲スチロールだから当たり前ですよね。
 でも、これが「密度が違う」ってことなんですよ。
 鉄は水より密度が高いから重い!
 発泡スチロールは水より密度が低いから軽い!
 これを g/cm で代表して表しているってことですよ。
 つまり 1cm の大きさで1.00000gなら、密度が 1.00000g/cm と表現し、もし 1cm で2.00000gなら2.00000g/cm と表現するわけです。
 これで g/cm の意味を理解してほしいんだけどな・・・・・!
さて、やっと本題に戻れますね。

 水の密度は温度によって変化する(水の密度表参照)。このため、メスフラスコ内の水の温度を温度計を用いて測定し、密度を実験ノートの表に記入し、メスフラスコが100mlと表示する水の実測した容積を求めなさい。

 解説8:水の密度表を見てください。水は温度によって密度が違いますね。つまり、温度によって密度が違うから、温度が違うと同じ量(たとえば1cm)採ってもその重さが違います。
 上の解説の中で、「縦1cm×横1cm×高さ1cmの水の重さは、おおざっぱに言うと、1gです」と書きましたが、本当に「おおざっぱ」です。精密には、温度が違えば重さが違います。これは、温度が違えば水の密度が違うということと同じ意味ですよね。
 水の密度表にあるように、水の密度は標準的な温度とされている20℃では 0.998203g/cm ですが、4℃では0.999973g/cm 、30℃では0.995646g/cm です。温度によって密度が違いますね。それも、温度が高くなればなるほど密度が低く(軽く)なっていますね。
 さて、一般常識です。ついでに覚えてしまいましょう。
 「水は、何℃のとき一番重いでしょうか?」
 水の密度表を見るとわかるとおり4℃です。これは一般常識として覚えておきましょう。ということは、4℃より低い温度では軽くなるはずですね、事実、1℃では0.999900g/cm 、0℃(水の状態)では0.999841g/cm になってますね。
 さらに温度が低い氷は水に浮きますね。密度が水より低い、すなわち軽いから浮くわけですね。
 また、100℃ではどうでしょうか?蒸発してしまいますね。今度は空気より軽くなっちゃうわけです。
 このように1cm あたりの重さは温度によってすこしずつ違いますね。
 もう一つ、ついでに覚えましょう。密度(g/cm3)は、よくρ(ロー、ギリシャ文字)で表わされます。
 さてそこで本題にもどります。メスフラスコの標線表示通り正しく水を入れたとすると、入れた水の温度(℃)と重さ(g)がわかれば、水の密度から正確な容積( cm )がわかることになりますね。だって、その温度における容積当たりの重さ(これが密度の意味で / の前と後)がわかっていて、この「 / 」の前と後の関係は温度が一定なら変わらないわけですから、前がわかれば後がわかる、後がわかれば前がわかるという関係ですからね。

解説9:温度を測定し、表を見れば水の密度がわかりますね。
 水の重さは天秤で実測すれば求められますね。ということは、その温度での密度から、容積を求められますね。密度の意味は g/cm ですから、実測した重さ(g) / 密度( g/cm )で求められますね。

解説10:さ〜て、また大問題が出てきましたね。正確な容積は、実測した重さと密度がわかれば出せることはわかっても、・・・・・重さと密度・・・掛けるのか、割るのか、割るならどっちをどっちで割るんだ???????こんなの覚えられるわけ無い・・・・・となりますね。どう考えたらいいでしょうか???実は私もおぼえるつもりはありません。それじゃどうするの?
 ここで、ずるいことを考えてみましょう。
 まず、掛けるのか割るのかですが、
 100mlのメスフラスコの標線まで入れた水だけの重さの実測値が100.093gだったとしましょう。水の温度が20℃だったとすると、そのときの密度は0.998203g/cm です。
 ずるいことってのは、これからです。理論的に容積100mlの水の重さを考えましょう。
 さて、いくつかな?水の重さは20℃では、1cm つまり1mlで0.998203gですよね。これが密度の意味でしたね。で、100mlあるわけですから、この100倍の重さとなり、99.8203gとなりますね。もし、メスフラスコの標線までの容積が正確に100mlで、行った操作も(もちろん天秤の精度も)正しいとします。そうすると、メスフラスコ内の水の重さは99.8203gとなるはずです。これより重かった場合は100ml以上の水がメスフラスコに入っていたことになり、軽かったら100mlに足りないことになりますね。
 で、実測した重さは?100.093gでしたね!!っつうことは・・・100ml以上の水がメスフラスコ内にある(もちろん操作ミスや天秤の精度は無視しますよ!)ことになり、求められるはずの容積は100ml以上の数値にならないとおかしいですね。
 へへへっ!これで答えの半分が出ました。(・・・?なんで?・・・)
 じゃ実際に計算してみましょう。計算は計算器がやるわけですから何回やらせてもたいして面倒ではないですね。かけ算一回と割り算二回の計三回を全部やっちゃいます。
 もう一つ、思い出しておいてください。このかけ算や割り算は、絶対に単位も無視してはいけません。
つまり、数値は数値でかけたり割ったりし、全く同じように単位もかけたり割ったりしないといけませんよ。忘れないこと!!。
◎かけ算:100.093(g)×0.998203(g/cm )=99.913133(g×g/cm = g/cm)となりますね。
 ※(g/cm)って何?:こんな単位は普通には存在しないので、通常ここでこの答えはおかしいと気づく人もいるはずです。
◎割り算:
(その1) 100.093(g)/0.998203(g/cm )=100.273191(g/g/cm = 1/cm )となりますね。

 ※(g/g/cm = 1/cm )って、何で?:g/g/cm  のg/gに注目してください。同じ物を同じ物で割るってことは、1/1=1、10/10=1、24/24=1ですからg/gも1ですよね。だからg/g/cm は 1/cm です。

(その2) 0.998203(g/cm )/100.093(g)=0.009973(g/cm/g = /cm )
 得られた答えの数値は99.91・・・・・と、100.27・・・・・と0.00997・・・・・でしたね。
 さあ、正しいのはどれだ?
 もうわかりますよね。だって、正確に100mlの場合の水の重さの理論値が99.8203g だったことを思い出してください。なのに実測した水の重さが100.093gだったから、答えは100ml以上の数値でなければおかしいでしょ!!
 だから正しいのは100.27・・・ですね。
 ???・・・っとこれで終わって良いのかな?
 ここでの本当に知りたいことは、掛けるのか割るのか、割るならどっちをどっちで割るのか
でしたね。
 正しい答えが得られたのは割り算の方で、さらに実測値の重さを密度で割る方ですね。ここまで押さえましょう(覚えなくて良いよ、いつも計算のはじめだけこの3回の計算すればいいんだから。いまは三回計算すれば正しい答えがわかるんだと知っていればいいです)。

解説11:目的は、100mlと表示されたメスフラスコに正確に水を入れ、入った水の重量と水温を測定し、温度から水の密度を求めて入った水の重量と密度とからメスフラスコの正確な容積を求めます。
 水の密度は1cm 当たりの重量で、温度によって水の密度が異なるために重量も変化します。このため水温を測定して水の密度表から理論的な重量を算出し、実測した水の重量を密度で割って得られた値をメスフラスコの容積とします。
 計算方法は、まず水の密度表からその温度における理論的な重量の予測値を出し、実測値がそれより重ければ100ml以上、軽ければ以下と予測する。次に実測重量値と表から得られた密度を3種類のかけ算と割り算を行い、重量の理論値と実測値から割り出した100ml以上か以下かを参照して3種類の数値から該当する値を選択してメスフラスコの容積とします。

  水入りメスフラスコの重さを測定したら直ちにメスフラスコを乾燥させる。
 (表の計算はメスフラスコの乾燥操作が終わってから行えば良い)
 この操作を計3回繰り返し、平均値を求める。乾燥に時間がかかるので、操作はメスフラスコの検定補正から開始する。
 解説12:水の入ったメスフラスコの重量測定後、計算をする前に直ちに中の水を出し、逆さにして乾燥させます。乾燥にはかなりの時間がかかり、経験では3回繰り返すために丸1日かかります。このため、第1回目は実験のはじめにできるだけ早く始め、手順良く乾燥までの操作を行う必要があります。メスフラスコの乾燥を待って、他の実験項目をこなしながら3回繰り返します。