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T-3 計量器の操作法練習

 化学実験において重量測定や容量測定は基本的な操作であり、これらを正確に操作することに習熟していなければならない。まず、用いる測定機器が正常な状態になっているかどうかに常に注意を払わなければならない。このために、それぞれの器具、機器の正確さを確認する方法を学ぶ。

 1:目的
 @重量測定の方法として、もっとも良く用いられる電子天秤について学ぶ
 A容量測定の方法として、メスフラスコの検定補正およびメスピペットとホールピペットの正しい使用法の繰り返し練習を行う。

 2:主な使用器具・機器
 電子天秤
 メスフラスコ(100ml)2本/各班
 ホールピペット(10ml)1本/1人
 メスピペット(10mlまたは指定した容量のもの)1本/1人

 3:重量測定
 3−1:天秤について
 電子天秤にはロードセル式、電磁式、音叉式などがあるが、学校で通常使用する電子天秤はロードセル式が多い。
 電子天秤は電源を投入するのみで、特別のチェックを行なわなくても自己診断して動作状態を機器自身で判断するので通常は特に何も行うことはない。しかし、天秤の設置状態、保守状態などにより、必ずしも正確な数値を表示しているとは限らない。また、地球上の地域により少しずつ異なる。このため、厳密には標準分銅の校正が必要になる。
 電子天秤の検定は標準分銅を数種類使用して行うことができる。
 電子天秤を移動させて使用したい場合がある。できれば移動しない方がよい。しかし、比較的ラフなタイプ(小数点以下2又は3桁 =0.01g〜0.001g= まで測定できるタイプ)は移動することができる。しかし移動時に振動を与えてはならない。また移動した後の設置状況には十分注意が必要である。
 精密なタイプの電子天秤(小数点以下4桁 =0.0001g= を超えるタイプ)は移動厳禁である。使用する場合も上皿に被測定物を乗せるときに衝撃を与えないように十分注意して使用する。

 4:容量測定
 4−1:メスフラスコの取り扱いに慣れよう
 メスフラスコは容量を測定するための器具です。
 通常、上部の細くなった部分に標線が1本あり、そこまで水を満たしたとき、表示される容積となる。ここで勘違いしてはいけないことは、標線まで水を入れたとき、入っている溶液の容積が表示値になることで、メスフラスコから取り出した溶液の容積は少し少なくなるため正確ではない。

 4−2:メスフラスコの検定補正
 2本の100mlメスフラスコを用い、それぞれをAおよびBとして完全に乾燥していることを確認してから、それぞれの重さ(風袋重量)を測定(小数点以下4桁まで測定)し、配布してあるプリントの表に従って実験ノートに作成した表に記入する。(配布プリントメスフラスコ・メスピペットの検定参照 エクセル表では同名タブ参照)
 次に、脱イオン水を正確に標線まで満たし、標線より上の部分についている水分を綿棒などを用いて吸い取ってから再び重さ(添加後重量)を測定(小数点以下4桁まで測定)し、実験ノートに記入する。
 実験ノートの表に従って水の重量を計算し、実験ノートの表に記入する。
 求めた水の重さから水の容積を求め、メスフラスコの標線までの容積とする。このときに必要な知識は、水の重さと容積の関係を知ることである。水の重さと容積の関係は水の密度を考えればよい。水の密度(ρ) を表す単位は g/cm3 である。これを見れば、密度とは1立方センチメートル当たりの水の重さであることがわかる。

 水の密度は温度によって変化する(水の密度表参照)。このため、メスフラスコ内の水の温度を温度計を用いて測定し、密度(別表から算出)を実験ノートの表に記入し、メスフラスコが100mlと表示する水の実測した容積を求めなさい。

 水入りメスフラスコの重さを測定したら直ちにメスフラスコを乾燥させる。
 (表の計算はメスフラスコの乾燥操作が終わってから行えば良い)
 この操作を計3回繰り返し、平均値を求める。乾燥に時間がかかるので、操作はメスフラスコの検定補正から開始する。

 4−3:メスピペットとホールピペットの使用方法に慣れよう
 ピペット類のうち、メスピペットとホールピペットは容積を測定するための器具です。
 この2種類のピペット類とメスフラスコやメスシリンダーとの違いは、この2種類のピペット類は溶液を器具からたとえばビーカーに出したとき、ビーカーに入る量が目的容積であることです。ビーカーなどの容器に、目的の容積の溶液を入れたいときに使用します。

 4−4:メスピペットの目盛りの検定
 配布した表=メスフラスコ・メスピペットの検定=に従って、あらかじめ自分の実験ノートに表を作成しておく。
 各自、50mlまたは100ml容のビーカーを一つ、5mlのメスピペットを1本選択する。まず選択したビーカーの重量(容器の重量;風袋重量という)を正確に測定(小数点以下4桁まで・4桁表示のデジタル天秤の数が少ない場合は3桁表示のデジタル天秤を使用)し、直ちに実験ノートの表に記入する。次に、選択したメスピペットを用いて脱イオン水を用い、目盛りの0〜2mlの範囲の2mlを自分のビーカーに正確に排出する。直ちに水入りビーカーの重量を正確に測定し、実験ノートの表に記入する。この操作を3回繰り返す。
 次に、上記の操作を別の2種類の範囲(たとえば1〜3mlや2〜4ml、あるいは3〜5ml)選択して、同様に2ml採り、ビーカーに正確に排出して上記と同様に添加前と後のビーカーの重量を正確に測定して実験ノートの表に記入する(表のメスピペットの目盛り検定参照)。
 5mlメスピペットを使うすべての操作が終了したら、実験ノートの表に従って、記入してある結果から水の重さを計算する。次にそれぞれの値を水の密度で割って、同一のメスピペットの別の範囲を使っで採った2mlの水の容積を求め、平均値を算出する。
 この結果のデータを比較して、メスピペットの各目盛りの正確さを検証しなさい。

 5:ホールピペットの使用法練習
 配布した表=ホールピペット練習=に従って、あらかじめ自分の実験ノートに表を作成しておく。各自10mlのホールピペットを準備し、<メスピペットの目盛りの検定>操作と同様に脱イオン水をあらかじめ重さを測定済みのビーカーに量り取り、水の重さを求め、結果を実験ノートに記載する。この操作を20回繰り返し測定後、水の密度を計算に入れて水の容積を求める。
 次いで、表に従って数値を処理し、まず測定の平均値を求めなさい。さらに表に従って数値処理を続け、バラツキを表す標準偏差を求めなさい。

 【参考】添付した「ホールピペットSTDEV自動計算」の使い方。
 (ホールピペットSTDEV自動計算=エクセル添付表の同名タブ)
 表にはすでに例として仮の数値が入れてあります。表をそのままPC上でコピーしてコピーの方を使ってください。以後はコピーを使用していることを前提とします。
 使用者が自分で記入する部分は風袋重量・添加後重量・水の密度の項です。
 そのほかのセルにはすべて計算式(自動計算)が入れてあります。計算式が入れてある場所に何か入れると計算式が壊れますから、エクセルの計算式のことがわかるまでは触れないようにしましょう。わかるようになればどんどん改良して使ってください。
 風袋重量と添加後重量項は小数点以下4桁に設定してあります。もし使用する天秤の桁数が小数点以下3桁であれば、小数点以下3桁に変更して使用しても良いでしょう。そのときは水の容積および(水の容積−平均値)も小数点以下3桁に変更した方が良いでしょう。
 桁数の変更方法はエクセルの使用方法を参照してください。操作そのものは簡単です。
注意:20回分の数値を全部入れる前は、平均の計算値が狂うため水の容積項より右側のセルは正常な数値を示しません。気にせずに風袋重量と添加後重量を間違わずに入れてください。

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