T-2 ガラス器具の種類と使い方
(その3)

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※ マニュアル本文は学生に配布するマニュアル本文の内容です。
※ 解説は、私が実験指導中に口頭で伝えた内容を文章化しました。主に実験前の説明で解説することを前提にしています。マニュアルには記述してない、非常に重要な内容を含みます。解説がこのホームページの中心と考えています。これから実験を学ぶ学生に特に読んでいただきたいと希望しています
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 マニュアル本文

 解説

 3:ピペットの使い方  
 3−1:メスピペット  

 @先端まで目盛りがあるタイプ(先端型)か、無いタイプ(中間型)かを確認する

 解説25:初心者は自分が使うメスピペットが中間目盛りか先端目盛りか気がつかずに、中間目盛りのピペットで全量出してしまうことがよくあるので注意。

 Aピペット上部を中指・薬指・小指と親指とで支えて口で液を吸い上げ、人差し指で上端部を押さえて液の流出を止め、目的の容器に人差し指で加減しながら液を流下させる。
 禁止:人差し指の代わりに親指を用いてはならない

メスピペットの持ち方

 解説26:初心者のかなりの人が、手本を見せた後で手本の通りの指使いで操作をしなさいと指示しても、ピペット上部を親指で押さえます。手の構造で、仕方ない面もありますが、ピペット上部で液の流出を制御する指は、最も微妙な動きを要求されます。親指ではこの微妙な調整がむずかしく、より微妙な動きができる人差し指が明らかに適しています。「メスピペットの持ち方」の図を参照して正確に覚えましょう。
 筆者の指導経験では、毎年数名は練習している間に無意識に途中で親指でピペット上部を押さえてしまっています。ですから、手が型を覚えるまで、かなり意識して練習をしてください。親指で押さえる癖をつけてしまうと就職した後で確実に馬鹿にされます。くれぐれも変な癖をつけないように。

 

 B使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない

 解説27:一度液を吸入したピペットの先端付近は当然試薬溶液が付着しています。したがって、先端付近がものに触れると試薬溶液が付着し、危険を伴うことが多いので、使用後に置く場合はピペットホルダーなどの適当な器具を使用しましょう。

 解説28:初心者に多い行為の一つが、一度液を吸入したピペットを続けて操作したり、移動させたりするとき、口をつけて吸い上げる側を下に向けて持つ人がいます。無意識で行う場合が多いですが、これは危険です。ピペット内部にわずかに残留した溶液が口をつける側に垂れてきて、次に使用する時に口に入る恐れがあり、大怪我のもとです。これも初心者のうちに、ピペットを持つときは口をつける側を上に向けて持つ癖をつけましょう。

 C有害薬品を扱うときは、必ず安全めがねをかけ、口で吸わずに時間がかかることを覚悟して安全ピペッターを使用するべきである

 解説29:安全めがねは必要です。人体に害のある試薬を扱う時は必ず使用しましょう。日本では、これまであまり重要視されなかったようですが、実験室や工場に入るときは安全めがねの装着を義務づけている国もあります。また、それぞれの実験室に常備されていると思いますが、頻繁に使用すること、さらに顔に直接触れるものですからできるだけ自分専用に準備することを勧めます。
機種は、めがねをかけた上からかけられるように、かけても負担にならない機種で、できれば紫外線カットできるものが良いでしょう。

 解説30:揮発性の強い試薬や、万一口の中に入ると危険な溶液類をたくさん使うことになります。このような場合は、自分の身を守るためにめんどくさがらずに安全ピペッターを使用しましょう。安全が優先です。
 逆に、危険がないものにも安全ピペッターを使用するという馬鹿なことはしないことです。安全ピペッターは、指のみで操作するよりどうしても時間がかかります。就職した後は、仕事はできるだけ短い時間で処理しなければなりませんね。

 解説31:安全ピペッターの使用方法。
※安全上の重要な注意:安全ピペッターは比較的堅いゴムでできています。ピペットを差し込む時、ピペットは差し込むすぐ近くを持ち、安全ピペッターも、ピペットを差し込むすぐ近くを持ちます。ピペットはガラス製です。堅いゴムの穴にガラス管を差し込む時、ピペットが折れる事故が時々あります。指がざっくり切れて大けがをします。特に差し込む時「ガラス管は折れる」ことを前提として操作します。
操作法:図のA、S、Eにはガラス玉があり、密閉されています。そこを強くつまむとゴムが歪んで空気が通ります。
 操作手順:
1;ピペットを下方から注意して差し込む。
2;Aをつまみながら球の中の空気を押し出す。
3;ピペット先端を溶液内に入れてSをつまみ、注意しながら徐々に試料をピペットの中にわずか多めに吸い込む。
4;Eをつまんで試料を出し、液量を標線に合わせる。
5;液を取る容器にピペット先端を移し、Eをつまんで液を目的量出す。
6:ホールピペットの場合はピペットの先端に残った液を、ピペット先端を壁面に接触させながら安全ピペッターのEをつまみながらEの横の小さい膨らみの空気で押し出す。

※取り扱い上の注意:ピペッター内に溶液が入らないように注意する。入ってしまったらガラス玉を外して中を洗い、乾燥させてまたガラス玉を入れなければならず、かなり大変です。そこでメーカーに問い合わせたところ、メーカーのお勧め解決法は廃棄だそうです。値段は数千円します。
 液を吸い込まないための注意はピペットを口で吸う時と全く同じです。これで1回使用毎に数千円の注意代金が稼げるわけですね。

 D液面の高さは下図の「b」が示す湾曲した最下面の位置とする 

 解説32:この図に示す液面のように湾曲した表面のことをギリシャ語の三日月にたとえて「メニスカス」とよぶ。

 3−2:ホールピペット  

 @ピペット上部を中指・薬指・小指と親指とで支えて口で液を吸い上げ、人差し指で上端部を押さえて液の流出を止め、目的の容器内に流下させる。基本的にメスピペットと同じ持ち方をする 

 ※禁止:人差し指の代わりに親指を用いてはならない

 解説33:メスピペットと基本は同じです。異なるのは次のAで説明するホールピペットの形態上の特徴である球部を暖めるという操作です。

 A液が流出後、ピペットをそのまま縦に持って壁に付いた残りの溶液が下部に溜まるのを待ち、まずピペットの上端部を人差し指で塞ぎ、続けて手で球部を覆って暖め、中の空気を膨張させて下部に残った溶液を押し出す

ホールピペット

 解説34:この操作で、なぜ下部に溜まった溶液が落ちるのか、理由をきちんと把握してください。私の経験では、ピペット上端部を指で塞がずに一生懸命手で球部を覆って暖めるという「まことに不思議な操作」を行っている学生が毎年数名いました。まず先にピペット上端部を指で塞がないと下部に溜まった溶液は絶対に落ちませんね。先に説明しているんですがね・・・・??
 また、おもしろいことに、球部が無いメスピペットでも、下部に溜まった溶液を出すためにピペット本体を一生懸命手で覆って出そうとしている滑稽な学生がいます。愉快なのは、このようなことをする学生に限り、使っているメスピペットが「中間目盛り型」なのですね。この愉快さ、わかりますか?皆さんはこのようなことで笑われないように、暖めて溶液を押し出す意味を理解してください。
 B使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない  
 C有害薬品を扱うときは、口で吸わずに時間がかかることを覚悟して安全ピペッターを使用すべきである  

 3−3:パスツールピペット・駒込ピペット  

 @上端部の口径に合うスポイトを用いる

 解説35:この場合のスポイトとは、合成ゴム(シリコンゴムが多い)製の写真にあるものです。

 

 A小指と薬指でピペット上部のガラス部分をしっかりと支え持ち、スポイト部分は人差し指と親指とで操作する。
 禁止:スポイト部分だけをつまんでぶら下げるような持ち方をしてはならない

駒込ピペットの持ち方

 解説36:初心者に駒込ピペットを持ってもらったときよく見る間違えた持ち方は、スポイト部分のみを四本の指で持ち、操作する方法です。この持ち方では溶液が入ったピペット部分が固定されずにブラブラしており、溶液をまき散らす恐れがありますので、必ず薬指と小指で必ずガラス管部分を固定して持ち、ガラス管部分をブラブラさせずに操作する癖をつけましょう。初心者のうちが肝心ですよ。
 B溶液を球状部まで吸い込まない。必要があれば大きなサイズのピペットを使用する  解説37:特に注意しなければならないのは、スポイトに溶液が入らないように注意する。スポイトは溶液に侵される恐れがある。
 C使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない