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T-2 ガラス器具の種類と使い方

 1:実験で用いる主要ガラス器具
 =主な器具の分類と名前=
 ガラス器具にはたくさんの種類があり、すべてを紹介することは不可能です。ここではガラス器具を大きく3種類に分けました。<反応容器><測容器><保存容器>です。
 反応容器は反応させるときに使用するものです。測容器は容量を測定するときに用います。保存容器は保存するための容器です。
 初心者が注意する必要があることがいくつかあります。
 反応容器に表示してある容量のメモリは目安程度の精度である。
 測容器内で反応させない。たとえば、試薬を溶解させる操作も反応である。
 さらに、個々の容器ごとに使用方法を覚えなければならないことがたくさんあります。追々覚えるほかありませんが、まず実験者自身がガラスで怪我をしないように注意してください。
 ここにはバイオ実験で良く用いられる主なガラス器具の写真とイラストを示します。だいたいのイメージをつかんでください。


1−1:反応容器
※ビーカー類
ビーカー  トールビーカー  コニカルビーカー

※フラスコ類

三角フラスコ  丸底フラスコ  平底フラスコ  坂口フラスコ  

ナス型フラスコ  梨型フラスコ  ケルダールフラスコ  枝付きフラスコ

※試験管類

試験管   マイクロチューブ

※液を移す器具類

 駒込ピペット  パスツールピペット

※ろ過に使う器具類

ロート  ブフナーロート(ヌッチェ)  ガラスフィルター  吸引びん

※その他

シャーレ(ペトリ皿)  時計皿  遠心分離管  分液ロート

 

1−2:測容器

メスシリンダー  メスフラスコ  ホールピペット メスピペット(中間目盛)

 メスピペット(先端目盛)  ビュレット(ガイスラー型)  ビュレット(モール型)

1−3:保存容器

試薬ビン(細口)  試薬ビン(広口)  デシケータ

デシケータ(減圧型)  滴ビン  洗浄びん

ガラス器具使用上の一般的な注意
1:ガラスは割れやすい(当たり前のこと)
 ガラス器具は落とすと割れる。
 ガラスは割れると手指などの怪我のもとになる。
 落ちた瞬間、反射的に割れる前に取り上げようとして、無意識に落ちた器具に手をのばしてしまう。この時は落ちる前に拾い上げてしまおうとするため動作が早く、かつ支えようとするから力が入っている。そしてガラスが落ちて割れる瞬間に手をのばすことになる。当然大けがをする。
2:ぶつけたり落としたりしなくても、棚の中などにしまってある間に壊れているものがある。自然に壊れるのでなく、だれかが割れていることに気づかずにしまうことが原因であろう。でもガラス器具の良いところは、壊れている場合、注意して見れば割れやヒビが確認できる。したがって、棚から取り出して使用する前に必ず割れ、ヒビを確認する癖をつける。
 また、使用後必ず洗浄しなければならないが、洗浄直前に自分がこれから洗浄するガラス器具に割れやヒビがあるかどうか確認し、あればその実験室のルールに従って処理する。
3:ガラスは性質上急激な温度変化やアルカリに弱い。通常の使用では気にする必要はないが、強アルカリ溶液を長期保存する目的では使用してはならない。ガラスが溶液に溶解する。
4:測容器とその他(反応容器や保存容器)を厳格に区別する。
 ガラスは熱膨張、熱収縮する。このため測容器の容積は温度で変化する。通常日本では20℃における容積を保証して販売されている。また、一度極端な温度で膨張収縮させたのち、20℃に戻してももとの容積に戻らない。乾燥方法には特に注意し、測容器の乾燥には温度を上げない。筆者は測容器の乾燥は必ず室温で行い、40℃以上の温度はかけない。
5:測容器は、規格上の精度を考えて使用する。
 同じ測容器でもメスピペットやメスシリンダーとホールピペットやメスフラスコとでは精度が異なる。従って、扱い方も別にする必要がある。
 これは器具の形状を見ればわかる。ホールピペットやメスフラスコは標線(刻線)をあわせるときの誤差を小さくするために刻線部分が細くなっており、さらに一つの器具は一つの容積専用につくられている。
 このため当然洗浄方法や乾燥方法も区別しなければならない。規格では500ml容のメスフラスコでは±0.25ml以下の誤差、同じ容積のメスシリンダーでは±2.5mlの誤差まで許容されています。精度が一桁違いますね。同様に、10mlのホールピペットは±0.02ml、メスピペットは±0.05mlの誤差が許容されています。
6:洗浄方法や乾燥方法など器具の取り扱いについての考え方。
 メスフラスコとメスシリンダーを洗浄、乾燥するとき、メスフラスコは厳密に管理する必要があるのでメスシリンダーもメスフラスコにあわせた扱いをすれば間違いないと考えることができる。しかし、メスシリンダーを洗浄・乾燥するためにメスフラスコと同じ時間と手間をかけるのは無意味。それぞれ精度に合わせた処理方法をとった方がよい。


 2:ガラス器具の洗浄
 ※原則:器具の種類、使用した用途、試薬により異なる
 以下は、最も一般的な洗浄方法

 2−1:反応容器(ビーカー、三角フラスコ、シャーレなど)一般
 @廃液類は指定の方法で処理する
 廃液類は教員の指示に従って実験室の決まり通りの処理を行う。はじめは処理方法がわからない場合が多いはずだが、不十分な知識で処理を行うと危険を伴う場合があり、慣れるまではその都度教員に問い合わせる。
 A汚れを簡単に水洗する
 B指定の洗剤を用いてスポンジまたはブラシでよく汚れを落とす
 C水道水で洗剤を良く洗い流す
 D少量の、実験室で決められている水(通常はイオン交換水や蒸留水など)で多数回(3回以上)すすぐことで水道水を洗い流す
 E乾燥棚中でほこりが付かないように乾燥する
 F本来の格納場所に格納する

2−2:計量器のうち、特に厳密な管理を要求する器具(メスフラスコ類など)
 @使用した試薬が内面のガラス壁に付着しないよう使用直後に直ちに水洗する(最重要)。
 A使用した試薬の種類により、洗剤を用いて内面を良く洗うが、このときスポンジやブラシなどを内面ガラス壁洗浄に用いず、(外側はスポンジを用いて洗う)洗剤と水を少量入れて容器を良く振って汚れを落とす。
 B水道水で洗剤を良く洗い流す
 C乾かないうちに蒸留水で水道水を洗い流す
 Dほこりが付かないように乾燥(加熱不可)する
 E本来の格納場所に格納する

2−3:ピペット類(パスツールピペット以外)
 @使用直後によく流水で内面の残留物を洗い流す
 A洗浄液入りのピペット洗浄槽内のかごにピペットを漬ける。このとき重要なのは、必ず液の流出側(先端部の口が細い側)を上に向けて漬ける(絶対)ことである。これによりピペット先端部の細い部分が割れるのを防止でき、洗浄器内での洗浄水の交換が可能になる。
 Bピペット洗浄器に移し、流水で洗浄液をよく洗い流す
 C乾かないうちに蒸留水で水道水を洗い流す
 D乾燥器でほこりが付かないように乾燥(加熱不可)する
 E本来の格納場所に格納する
※パスツールピペットは先端が極端に細く、ピペット洗浄槽やピペット洗浄器での出し入れや保存中に簡単に折れる。このため、出し入れする時、手を切るなどけがをするため、他のピペット類とは別の適当な洗浄方法をとる必要がある。(例:パスツールピペットの形状に合わせた超音波洗浄器など)

 2−4:特殊器具の洗浄
 指定の方法があるので指示に従うか、マニュアル等で各自洗浄方法を調査して洗浄を実施する。


 3−1:メスピペット
 @先端まで目盛りがあるタイプか、無いタイプかを確認する
 Aピペット上部を中指・薬指・小指と親指とで支えて口で液を吸い上げ、人差し指で上端部を押さえて液の流出を止め、目的の容器に人差し指で加減しながら液を流下させる。
 禁止:人差し指の代わりに親指を用いてはならない。
 B使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない。
 C有害薬品を扱うときは、必ず安全めがねをかけ、口で吸わずに時間がかかることを覚悟して安全ピペッターを使用するべきである。

※安全上の重要な注意:安全ピペッターは比較的堅いゴムでできています。ピペットを差し込む時、ピペットは差し込むすぐ近くを持ち、安全ピペッターも、ピペットを差し込むすぐ近くを持ちます。ピペットはガラス製です。堅いゴムの穴にガラス管を差し込む時、ピペットが折れる事故が時々あります。指がざっくり切れて大けがをします。特に差し込む時「ガラス管は折れる」ことを前提として操作します。
操作法:図のA、S、Eにはガラス玉があり、密閉されています。そこを強くつまむとゴムが歪んで空気が通ります。
 操作手順:
1;ピペットを下方から注意して差し込む。
2;Aをつまみながら球の中の空気を押し出す。
3;ピペット先端を溶液内に入れてSをつまみ、注意しながら徐々に試料をピペットの中にわずか多めに吸い込む。
4;Eをつまんで試料を出し、液量を標線に合わせる。
5;液を取る容器にピペット先端を移し、Eをつまんで液を目的量出す。
6:ホールピペットの場合はピペットの先端に残った液を、ピペット先端を壁面に接触させながら安全ピペッターのEをつまみながらEの横の小さい膨らみの空気で押し出す。
取り扱い上の注意:ピペッター内に溶液が入らないように注意する。入ってしまったらガラス玉を外して中を洗い、乾燥させてまたガラス玉を入れなければならず、かなり大変です。そこでメーカーに問い合わせたところ、メーカーのお勧め解決法は廃棄だそうです。値段は数千円します。
 液を吸い込まないための注意はピペットを口で吸う時と全く同じです。これで1回使用毎に数千円の注意代金が稼げるわけですね。
 D液面の高さは下図の「b」が示す湾曲した最下面の位置とする。

 3−2:ホールピペット
 @ピペット上部を中指・薬指・小指と親指とで支えて口で液を吸い上げ、人差し指で上端部を押さえて液の流出を止め、目的の容器内に流下させる。基本的にメスピペットと同じ持ち方をする。
 禁止:人差し指の代わりに親指を用いてはならない。
 A液が流出後、ピペットをそのまま縦に持って壁に付いた残りの溶液が下部に溜まるのを待ち、まずピペットの上端部を人差し指で塞ぎ、続けて手で球部を覆って暖め、中の空気を膨張させて下部に残った溶液を押し出す
 B使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない。
 C有害薬品を扱うときは、口で吸わずに時間がかかることを覚悟して安全ピペッターを使用すべきである。

 3−3:パスツールピペット・駒込ピペット
 @上端部の口径に合うスポイトを用いる
 A小指と薬指でピペット上部のガラス部分をしっかりと支え持ち、スポイト部分は人差し指と親指とで操作する。
 禁止:スポイト部分だけをつまんでぶら下げるような持ち方をしてはならない

駒込ピペットの持ち方
 B溶液を球状部まで吸い込まない。必要があれば大きなサイズのピペットを使用する。
 C使用したピペットは先端部が他に付着したり、上端部から残留液が垂れるような保持方法はとらない。

 

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